「ねえ撮らないでよ」
そう言ってきみの手のひらで画面が真っ暗になった。
写真を撮られることが嫌いなきみは
「貸して、わたしが撮ってあげる」といつもぼく1人だけを映し出す。
そうじゃなくてさ、ぼくなんかどうだっていいから
今そこにいるきみは、瞬きのシャッターを切るとすぐに消えてしまう。
瞬きをするのが勿体無いほど、愛おしくて、掴めなくて、少しだけ寂しいよ
どうせいつか消えていなくなるんだろう、きみは。
その日はいつもと同じ、ファミレスに向かった。
よく飽きないなと思うくらいきみは毎回おんなじチーズハンバーグステーキを頼んで、美味しそうに食べるから
きみがハンバーグに夢中になっている隙に、カメラのシャッターを切った。
「だから嫌だっていってるの、可愛く映らないから」
いつもより少し呆れ気味にきみはそう呟いた。
僕は何も言わない
けれど、これからもきみのそばにいれる間は
飾らない可愛い君の" 隙 "をぼくだけに映し出したい。
視界のレンズ、瞬きのシャッター。
それだけじゃきみは溢れてしまうから
後で独り占めできるようにカタチに残させて欲しいんだ、ごめんね。